DATE with an ANGEL
9
「お願いです史浩さん。啓介さんの居場所を教えて下さい!」
「……いい加減にしろよ、ケンタ」
ケンタからファミレスに呼び出された史浩は、いくらダメだと言ってもしつこく食い下がるケンタに閉口していた。
啓介が天使を連れて姿を消してから既に一ヶ月が過ぎようとしていた。ひどい痕になったケンタの頬の痣も、もうほとんど消えかかっていた。
その間もケンタは啓介を捜し続けていたが、その行方はまったく掴めなかった。
「このままじゃ啓介さんがどうなるか分かんないんですよ? もしもあの悪魔のせいで啓介さんの身に何か
あったら───」
「俺にはそうは思えないぞ」
ケンタの言葉にも動じず、史浩は冷静に答えた。
どちらかといえばケンタの方が、よほどとんでもない事をしでかしそうだった。
「少し頭を冷やせよ、ケンタ。別に啓介は走り屋をやめた訳じゃない。そんなに心配しなくてもそのうち戻ってくるさ」
しかしケンタほどではないが、史浩も啓介たちの事は気になっていた。天使の怪我の具合も心配だった。
しばらくしたら様子を見に行くかと、ケンタの懇願を聞き流しながらこっそりと史浩は思った。
ある日、天使はひとりでまた二階のテラスに佇んでいた。
そして何を思ったのか、背中の羽根に巻かれた包帯を自らの手で取り去った。
自由になった羽をゆっくりと広げ───……そっと羽ばたかせた。伸ばした羽のどこにも、何の痛みも走らなかった。
そして、天使はテラスからふわりと飛び立った。
すぐに下の庭へと降り立ったけれど、天使は確かに自らの羽で空を飛んだ。久しぶりのその感覚に、自然と心が浮き立つのを感じていた。
しかし家の中から啓介が天使を探す声が聞こえてきた。天使は慌てて再び飛び立ち、テラスへと舞い戻った。
啓介が二階へと階段を上がってくる気配を感じながら、天使は急いで羽に包帯を巻き直した。
「……何だ。またここにいたのか」
啓介の目の前に立つ天使は、いつも通り羽に包帯をしたままの姿だった。
逆に、啓介の様子がいつもと違っていた。眉を寄せて、顔色は悪く───今までになく体調が悪そうだった。
天使は心配になって、啓介の元へと近づいた。
「……?」
「ゴメン。ちょっと、頭が───……」
切れ切れにつぶやいた啓介であったが、天使が肩を支えるとぐったりと身体を預けてきた。支えきれずに、二人はそのまま床へと座り込んだ。
「ってえ……」
苦しげにつぶやいた啓介の瞳は硬く閉じられていた。
そんな啓介の身体を、天使は羽を広げてそっと包み込んだ。
この別荘にやって来てから、啓介の頭痛は段々ひどくなっていた。
目を閉じた啓介はひどく苦しそうで───天使はその時が近い事を改めて思い知った。
啓介が目覚めると、そこはゲストルームのままだった。
いつの間にか気を失ってしまったのか、部屋はもう既に朝の明るい光に満ちていた。
客用の大きなベッドに啓介は寝ており、そして天使も一緒にベッドに横たわっていた。
そしてもちろん布団は掛けられていたけれど、天使はさらにその下で羽を広げ、啓介を包んでくれていた。
「……俺の事、一晩中あっためてくれたのか?」
「…………」
天使は無言のままだったが、淡く微笑む表情がその事実を啓介に伝えていた。何より啓介の身体が、ずっとそのぬくもりを覚えていた。
「サンキューな」
頭の奥はまだ少し重い感じがしたけれど、啓介は天使に笑いかけた。啓介を苦しめている頭が割れるような痛みを、まるで天使が和らげてくれているような気がした。
何よりも天使のその心遣いに、啓介は癒された。
しかしふと、啓介は気づいた。啓介が半ば身体の下に敷くようにしてしまっているのは、天使が怪我を負った右の羽だった。
確かに羽には今も包帯が巻かれていたが、けれど天使は痛みに表情を歪めてはいなかった。
「これ……」
「……!」
身体を起こし、驚きながらそれを見つめる啓介に、天使はようやく自らの失策に気づいた。
「もしかして、怪我……治ったのか?」
驚き問いかけてくる啓介の視線から、天使は目を伏せた。
その黒い瞳は戸惑いに揺れていた。
……映画のパロだから仕方ないんですけど。私の筆力が足りないせいもあるんですけど。
せめて天使が話せたら、も少し涼介さまらしさが出せるのに〜(−−;)
でも啓介と啓介ファンの方にとっては、もしかしたらこのまま話せない方が幸せかな…?(^^;)
普段の涼介さまに羽があったら、きっとベシッ!と顔面を叩いているでしょうからね(−−;)
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