DATE with an ANGEL
プロローグ
そこはまばゆい光に満ちた世界だった。
昼も夜も存在しない、穏やかな静寂と空間が果てしなく続く、まるで夢のように美しい世界───人間たちが時に『天国』と読んでいる場所だった。
そうして今、そこの主がひとりの者と相対していた。
『……旅立つ時がきた』
それは、声ではない『声』だった。
空気を震わせる音の振動ではない、純粋にその者の意思が伝わってくる───心の声。
『俺が命じた通り、あの人間を迎えに行くんだ』
他には誰もいないその場所で、その言葉はたったひとりの者へと向けられていた。
艶やかな黒髪と雪のように白い肌をしたその者には、特に驚いた様子はなかった。ただ静かに、その言葉を受け止めていた。不安など微塵も感じている風もない。
『本当はお前だけは行かせたくなかったが……こうも皆が出払っていては仕方ない』
そうつぶやく主の方が表情を強張らせ、苦々しい想いを吐露していた。
遠く、人間たちの住む地では神と崇められている者であるのに、その様子は親が子供を───そして恋人が恋人の身を案じるかのようであった。
その過度とも思えるほどの心配に、言われた者は頭を横に振るとすぐにその場を後にした。
そんな何気ない動作でさえ優美に見えるその物腰。
今までその任に着いた事は一度もないはずであったが、そんな事などおくびにも感じさせない落ち着いた態度であった。
『気をつけろ。旅の無事を祈っている───』
主の言葉がその背中にかけられたが、その者は一度も振り返らず───そして立ち去った。
───出発の時だった。
しかしその道行きには、このあと大きなトラブルが待ち受けていた。
ううう……。ある意味では私が一番無理をしたかもしれません〜(−−;)
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