DATE with an ANGEL・2
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   そしてついに、バトルの夜がやってきた。
   夜の赤城にはどこから聞きつけてきたのか、沢山のギャラリーが集まって来ていた。
   約束の時間を前に、啓介は頂上にFDを止めて涼介と一緒に京一を待っていた。すぐ傍
  には史浩とケンタの姿もあった。
   FDは涼介が考えたとおりのセッティングで仕上げていた。パワーだけを重視したので
  はない、ダウンヒルのセッティング。
   調整のために何本か走って、文句のつけ様のないその決まり具合に啓介は驚いた。
   そして───ランエボの一団がやってきた。
   京一の黒い車体を先頭に、数台のランエボがFDの目前に次々と停まった。
   まず京一が、そして他のランエボの運転者たちが車から降り立った。先日居酒屋で会っ
  た強面の天使たちだった。
  「待たせたな」
   京一は悪びれた様子もなく、不敵に笑った。そして涼介に向かってぬけぬけと言い放っ
  た。
  「バトルが終わったらすぐに帰るぞ」
  「勝手に決めんな!」
   京一の言葉に言い返したのは啓介の方だった。
  「俺は、お前にだけは絶対負けねえ!」
  「フン」
   啓介と京一は、睨み合った。
   目の前のやりとりを無言で見つめていた涼介であったが、何か言いたげな瞳をしていた。
   そんな涼介の視線に気づいた啓介が振り返った。                 
  「どうかした?」                                
  「……夕べ俺が言った事、覚えてるか?」                
  「バトルの事だろ。覚えてるよ」                         
   今日のバトルに勝つためのアドバイスは、もう既にしてあった。けれどもっともっと、
  少しでも啓介を励ましてやりたかった。
  「……勝ってくれ、啓介」
   涼介は言いながら啓介に近づいた。その綺麗な瞳は、じっと啓介だけを見つめている。
  「お前なら勝てる───」
  「え? 涼介さ───……」
   状況を認識する前に、柔らかい感触が啓介の唇に触れた。
   久しぶりの───そして、涼介からのキスだった。
   一瞬の出来事であったが周囲は一斉にどよめいた。
   啓介と涼介の仲の良さは周知の事実であったが、人前でのキスは初めてであったからだ。
   ケンタは赤くなり、史浩は頭を抱えて俯いた。
   思いがけないキスに啓介は呆然と涼介を見たが、涼介はためらいながらも微笑んでいた。
   そして無言で見つめ合ううちに、啓介の心に力がわいてくる。啓介はもう涼介が天使の
  ままでもよかった。けれど涼介のために、絶対に勝つ───そう思った。
   目の前で見せつけられた光景に、京一はというとこめかみに青筋をたてていた。京一の
  背後にいる清次たちは、怒りのオーラさえ感じる後ろ姿に一歩退いた。
  「……そろそろ始めてもいいか?」
   その場で一番先に立ち直ったのは史浩であった。それはこの場に居合わせた者の中で、
  啓介たちの仲に一番免疫があったからかもしれない。
  「俺はいつでもいいぜ」
  「俺もだ」
   啓介も京一もそれぞれ頷いた。
  「じゃあ───」
   その場を離れようとした涼介であったが、いきなり啓介がその腕を掴んだ。
   今度は涼介の方が驚く番だった。
  「啓介?」
   訝しげに涼介が呼んでも、引き止める啓介の腕は解かれないままだ。
   立ち去る事の出来ない涼介に、啓介は言った。
  「一緒にFD乗ってくれよ」
   啓介は真っ直ぐに涼介だけを見て言った。その決心は揺るがない。
  「一緒に勝とうぜ」
  「啓介……」
   啓介の申し出に重ねて驚いた涼介であったが、啓介の決意が伝わったのか、すぐに頷い
  た。
  「……わかった」
   涼介の返事に啓介は笑顔を見せると、FDに乗り込んだ。涼介もだ。
   京一も愛車へと乗り込んだ。その強面は、これ以上はないほどしかめられていた。
  「俺も舐められたもんだな……」
   ランエボの運転席で、小さくつぶやく。
   後悔しても後の祭りだと、京一はそれに敢えて異論を唱えなかった。勝つための可能性
  は少しでも高い方がいい。
   それがどんなに不愉快な事であってもだ。
   FDとランエボはスタートラインに車体を並べると、激しくエンジンをふかし始めた。
   後はもう、バトルが始まるのを待つだけだった。
  「頑張って下さい、啓介さんっ!」
  「京一さんっ!」
   ケンタや天使たちが、それぞれ声援を送っていた。
  「カウントいくぞぉ───!」
   二台の間に立ち、史浩が叫んだ。
  「───2、1、GO!!」
   カウントダウンとともに史浩の腕が振り下ろされる───同時に、二台はスタートした。

  



峠のチュウ。
思いついたと時、書こうかどうしよっか迷ったのですが、結局書いてしまいました。
ここで書かなきゃもう書く機会はないなーと思いまして(^^;)
この話では涼介さまは天使だしね(^^;)


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