ニ分割兄弟綺談・17



   あれから三日───。
   啓介が大学から帰ってくると、ガレージにFCの姿はなかった。
   家にいたのは史浩一人だった。
  「よう、おかえり」
  「……あいつは?」
   いない事を承知で聞いてみる。
  「まだ帰ってない。……気になるのか?」
  「別に、そんなんじゃねーよ」
   涼介と啓介。兄弟二人の関係は現在最悪になっていた。
   お互い、相手にどういう態度で接すればいいのかわからず、よそよそしかった時よりもさらに酷くなっ
  た。
   というより、涼介の方が一方的に啓介を避けていた。
   朝は啓介が起きる前に出かける。峠に行っても見かけない。夜は帰ってきても部屋から出てこない。
   徹底的に避けられていた。
  「なんでこうなっちまったんだか……」
   ガックリと肩を落とし、啓介はリビングのソファーに身を沈めた。
   そんな啓介に史浩はコーヒーを淹れてやった。
   差し出されたカップを受け取った啓介は、疲れ果てた声でつぶやいた。
  「あーもう、どうすりゃいいんだよ〜」
   時間が経てば涼介の気持ちも落ち着いて、少しは話ができるようになるかと思っていたのに。
   涼介との距離は縮まるどころか、離れる一方だった。
   そんな、コーヒーを飲みながらぼやく啓介を、史浩は複雑な気分で見つめた。
  「……このままでもいいんじゃないのか」
  「へ?」
  「ちょっとぎこちないけど、このままでもいいだろ」
   もちろん仲が悪いのがいいとは言わない。
   言わないが、以前の二人の仲の良さに比べれば今の状態の方がよほど自然だ。
   兄弟だからって世間の兄弟が皆、仲がいい訳ではない。不仲な兄弟だってたくさんいるのだ。
   しかし史浩の言葉に納得できないのか、啓介は心外そうな声を上げた。
  「なんでだよ!?」
  「なんでって───……。じゃあ啓介、お前まさか涼介とつきあいたいのか?」
  「そ、そうじゃねーけど」
   思いっきりしかめっ面の史浩の言葉を、今度は啓介も否定した。
   けれど史浩の言葉にすべて納得した訳ではないらしい。
  「……でも、こんなギスギスしたのは嫌だ」
   どこか寂しそうに、ポツリとつぶやいた。
   その時、玄関の方から鍵を開ける音がした。
   帰ってきたのはもちろん涼介だった。
   廊下を歩いてきた涼介は、リビングの前で啓介と史浩に気づいた。
  「よう涼介、今日は早いんだな」
  「ああ」
   涼介は史浩に短く返事をしただけで、啓介には何も声をかけなかった。
   かすかに視線が交わったかと思ったが、それもほんの一瞬。涼介は表情も変えずに、さっさと階段を上
  り二階へ行ってしまった。
   その態度が、啓介の苛立ちに火をつけた。
  「あの野郎───」
  「おい、啓介!」
   史浩が呼び止めたが、啓介は振り返りもせず涼介を追いかけて二階へ上がっていってしまった。
  「啓介……」
   史浩は心配そうにつぶやいた。
   まさか未練があるんじゃないんだろうな───とは、言えなかった。


   二階の涼介の部屋のドアには、しっかりと鍵がかけられていた。
  「おい!」
   ドアノブを捻っても開かない。仕方なく啓介は部屋のドアをドンドンと叩いた。
   中からの返事はない。
  「出てこいよ! 話があるんだよ!」
   しかしドアを叩いても、声をかけても───涼介からの反応はなかった。
   啓介は舌打ちをした。
   最後に話をしてから三日。
   最初は涼介もショックだろうと思ったのだ。だから啓介も、避けられても無視されても我慢した。
   けれど三日経っても涼介の態度にまったく変化はなかった。
   なんだかこれでは啓介に一方的に非があるようではないか。
   そこまで考えて、ふと啓介はある事を思いついた。
   涼介の部屋の前の廊下に座り込む。そしてポケットからケータイを取り出した。
   そして、メールを打ち始めた。
  「……よし。送信、と」
   打ち始めてすぐに打ち終わり、啓介は送信ボタンを押した。メールは滞りなく送信された。
   それから30秒。
   1分。
   ───しかし、部屋の中からは何の反応もない。
   読んだのか、それとも読まずに削除したのか。
   もしかしたらケータイの電源自体を入れていないのかもしれなかった。
  「これもダメか……」
   落胆した啓介が腰をあげかけた時───。
   ガチャリという音とともにゴン!!という衝撃が後頭部にぶつかってきた。
  「いってぇ!!」
   突然の痛みに、啓介は頭を抱えた。
  「何すんだよ!?」
   痛む頭を抱えたまま、咄嗟に振り返って叫んだ。
   そんな啓介の視界に入ってきたのは───……。


   やっと───ようやく開いたドア。
   そして部屋の入り口には、綺麗だけれど冷たい表情をした人が立っていた。


啓×涼は私にとって基本です。当然です。真理です〜(^^)
でも話を作る時には、できるだけ予定調和的な話(カップリング)にはならないように気をつけてはいるんです
が…。これがなかなか難しいったら(^^;)
そんな訳で、兄弟ラブラブをお待ち下さってる方、なかなか進展しなくてごめんなさい〜(><)
まあ、うちのサイトでラブラブってのも、ちょっと難しいんですけど……てへ(^^;)>