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  ・トォニィ及びナスカチルドレンが大好きな方。
   (いじめてるつもりはありませんが、あんまりイイ目にあってないので)


  どんな内容の話でも、広い心で許容できる方のみ、↓へどうぞ。






















































慟哭・2



   ナスカを捨ててシャングリラで再び宇宙に逃れてから、ミュウたちは人間たちとの戦闘を開始した。
   今まで人間たちからどんなに攻撃されようとも、ミュウは防戦にまわるばかりで、決して積極的に戦おうと
  はしなかった。
   それがナスカ崩壊後、一変した。
   自分たちを殲滅しようと攻撃してくる艦隊。
   人間たちの乗ったそれを、一隻残らず破壊した。救命艇に乗った人間たちも残さず屠った。
   直接手を下したのは、ナスカの地で自然分娩で生まれたトォニィを始めとする7人の子供たち。
   「タイプ・ブルー」の攻撃力を持つ彼らは、人間たちの戦艦をいとも簡単に破壊していった。
   しかしそれを命じたのはミュウの長であるソルジャー・シンだった。
   命令に忠実に救命艇さえも破壊したトォニィに、そしてそれを指示したソルジャー・シンに、ミュウたちから
  一斉に非難の思念が寄せられてくる。
   おかしなものだとソルジャー・シンは思った。
   ミュウたちこそ今まで人間たちから同じような───むしろそれ以上の酷い扱いを受けていたろうに。
   救命艇に乗っているとはいえ、戦艦に搭乗していた以上、それはミュウたちを殲滅するよう命令を受けた
  軍人であるのに。
   つくづくミュウの戦いに向かない、その性質を思い知る。


  「グラン・パ!」
   戦闘を終えたトォニィが、ブリッジに上がってきた。良くも悪くも戦いの昂揚感が残っているのか、トォニィは
  微かに頬を紅潮させてソルジャー・シンの背中に話しかけた。
  「グラン・パ、見ていてくれた?」
  「……ああ」
   トォニィは戦闘を終える度に、必ず報告にやってきていた。
   敵の戦艦を何隻落としたか、何人何十人何百人の人間を殺したか───グラン・パのためにやったのだ
  と、その度に嬉しそうに。
   同じくブリッジに居るハーレイやエラなどほとんどのミュウたちは、聞くのも辛いのか俯くばかりだが、ソル
  ジャー・シンの表情は変わらない。
   その耳にトォニィの声は聞こえているだろうに振り返る事もない。
   まるで氷のような冷たい翡翠色の瞳で、メインスクリーンに映る人間たちの戦艦の残骸を見詰めていた。
  「グラン・パ───」
  「……敵だ」
   ソルジャー・シンがつぶやくと同時に、警報音がブリッジに鳴り響いた。
  「新たな敵艦隊の接近が確認されました!」
   オペレーターの声に、ブリッジ───そしてシャングリラ船内に新たな緊張が走った。
  「行け、トォニィ」
   振り向きもせず、今さっき戦いを終えたばかりのトォニィに一言の労いの言葉もなく、ソルジャー・シンは再
  度出撃を言い渡す。
   トォニィの心に広がる一瞬の失望。
   けれど命令を受けたトォニィは頷くと、休む事なく再度出撃した。


   再度攻撃しようとしてきた人間たちの艦隊は、またもトォニィたちの手によって、シャングリラに襲いかかる
  前に宇宙の藻屑と化した。
   シャングリラ周囲の三万宇宙キロの空間には、敵の姿は影も形もなくなった。
   それを確認したソルジャー・シンは、船内の警戒警報を第三級に変えるように指示し、自らもブリッジを後
  にした。
  「ソルジャー、どちらへ?」
  「……青の間に戻る。トォニィには来るなと伝えておけ」
   ハーレイを一瞥し冷たくそう言うと、ソルジャー・シンはそのままブリッジを出て行った。
   その後ろ姿をハーレイはただ見送るしかなかった。
   かつてミュウと人間の未来に希望を抱き、次いで悩み、憂い、道を模索し続けた、あの優しかった少年は
  どこへ消えてしまったのだろうか。
   そう思うと同時に、彼が負った傷の深さを思い知る。
   人は誰しも無くしてしまったらいけないものを持っている。
   もしもそれを無くしてしまったら、自らの一部をも欠いたまま───いつまでも塞がらない傷口から血を流
  しながら生き続けなければならないのだろう。
   そしてソルジャー・シンにとってそれが何であったのか、ハーレイはよく知っていた───。  


   青の間へと続く通路を歩むソルジャー・シンの後を、軽やかな足音が追いかけてきた。
   歩みを止めないその肩に、軽い感触が乗ってきた。
   視線を横に流せば、ナキネズミのレインがいた。
  「……お前か」
  『じょみー、アイタカッタ』
   人間たちとの戦闘が開始されてから、ソルジャー・シンはブリッジにいるか青の間にいるかのどちらか
  だった。
   ブリッジにレインの居場所はなく、青の間には常時ソルジャー・シンのシールドが固く張られて、レインは
  もちろん誰一人として入れなかった。
   だからこうして会うのも久しぶりだった。
   レインはその大きな尻尾をふるりと揺らして、思念で聞いてきた。
  『ドウシテとぉにぃタチニコエヲカケテアゲナイノ?』
  「───」
   ソルジャー・シンが無言でいると、レインはさらに聞いてきた。
  『とぉにぃ、ガンバッテル。じょみーノタメニガンバッテルノニ』
   ミュウたちの中には、人間たちを躊躇なく殺めるトォニィたちに対する恐れと反発があった。
   そしてそれを命令する自分に対する戸惑い。
   なのにトォニィたちに冷たく接する態度に対する非難。
   それをレインも感じ取っていたのかと、ソルジャー・シンは苦笑した。
  「知りたいのか?」
  『ウン』
  「そうか……」
  『───!!』
  ソルジャー・シンの思念に触れたレインは、驚いてその肩から床に飛び降りた。
  振り返りもせず一目散に逃げていく後姿を、立ち止まってソルジャー・シンは見送った。
  その姿に、やはり自分は酷い事をしているのだと自嘲した。
  けれど仕方がない。
  これ以上トォニィたちを愛してしまったら、彼らを兵器として───捨石として戦場へなど送り出せなくなるの
 だから。


  主を失った青の間に一人、ソルジャー・シン───ジョミーは戻った。
  ぬくもりのかけらもない、冷たい寝台だけがジョミーを出迎えた。その真白なシーツにそっと、ジョミーは指で
 触れた。
  彼を想う時だけ、ジョミーの胸は痛んだ。
  トォニィはミュウのため───ジョミーのために人間たちを殺しているが、本当はミュウも人間も同じなのだ
 といずれ知るだろう。
  その手を真っ赤に濡らすのは人間の血。けれどそれはミュウの血でもあるのだと。
  その事によりどれだけトォニィたちが苦しもうとも構わない。
   テ ラ
  地球に辿り着くためにもう手段は選ばない。
  そうして再び、ジョミーは自嘲した。
  ……彼は、ジョミーを愛してくれたのに。
  ジョミーが耳に装着した、彼の記憶装置が伝えてくる。
  ジョミーを戦いに送り出す事を心底辛いと思うほど、彼は自分を愛してくれていた。受け入れてくれた。
  ジョミーを愛すれば愛するほど、自分の苦悩が深まるのだと分かっていてそれでも、彼はジョミーを拒絶しな
 かった。
  けれど自分は彼のようにはなれない。なろうとも思わない。
  皆を愛し、愛され───彼が愛してくれた「ジョミー」はもういない。
  彼とともに死んでしまった。
  胸の奥に広がる昏い穴に呑み込まれてしまった。


  両親への思慕も、幼馴染みとの思い出も捨てた。
  同胞への情けもとうに捨てた。
  もうこの胸の中には誰も入れない。
  彼と、地球への想いだけ───……。






1を書いた時には、続き物にするなんてまったく思ってませんでした。
でも思いついちゃったので書いてみようかとチャレンジ。
なんか「地球へ…」ではこういうパターンが多いですね、私。
ちなみに私の書くソルジャー・シンは、青の間にはナキネズミさえも入れないです(^^;)

アニメのジョミーも原作のジョミーも、ナスカチルドレンに対しては冷たい部分がありましたが、私もなんとか理
解しようと努めたのがこの話です。
トォニィたちが可哀相でごめんなさい!
いじめるつもりはないんだけど、所詮私はジョミ×ブルの女なんです…。
もしも気分が(ーー;)になってしまった方がいたら、どうぞ「長いお別れ」をご一読ください。
あれはこのシリーズの後日談にあたります。


2007.11.11




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