慟哭・8 〜時をかけて〜
グランド・マザーは完全に破壊した───。
その代わりにサイオンを使い果たし、致命傷を負ったが、それでもよかった。
人類は自ら機械の呪縛を断ち切り、ミュウはそれを助けた。
ミュウも人類も、すべての者がS・D体制から解放された。
すべては次の世代に託した。ミュウと人類の共存の道は拓かれた。
崩れ落ちるユグドラシルの最下層で、意識を失う最後に感じたもの。
後悔と憎しみを抱えながらそれでも生き、そして信じた未来───……それは「希望」と呼べるもの
だった。
そして、気づけばここにいた。
見知らぬ場所だった。今まで訪れた記憶などない、初めての場所だった。
確かめるように歩き出した。
青く───どこまでも青く澄んだ空。見渡す限り、豊かな緑に覆われた大地。
海も空の色をそのまま映したかのように青く、打ち寄せる波の音さえも清涼だった。
遠くに小鳥の声。優しくそよぐ風。
微風に誘われるように、促されるように歩き続けた。
その間も、目にする景色の美しさにただ感嘆した。
二つの太陽に照らされたナスカの赤い夕焼けも、アルテメシアを覆う白くたなびく雲海もそれぞれ美し
かったが、ここにはかなわない。
今まで目にした幾多の恒星系のどんな星よりも、この場所は美しかった。
光に満ち溢れすべてが輝き、生きる力に満ちていた。
まるで、夢見ていた約束の地のようだ───。
ふと、足もとに咲く一輪の花に視線が留まった。思わず足を止めた。
微風に揺れる薄桃色の花弁。
見覚えのある花。荒廃したナスカの大地に初めて根付いた花だった。
それが、どうしてここに───。
彼と約束した。あの星に辿り着いたらこの花の種を蒔こうと話した。
それがいま目の前で風に揺れていた。
もしかしたらここは───……。
『 』
その時、遠く───呼ぶ声が聞こえたような気がした。
それに引かれるように再び歩き出した。
歩を進める毎に、少しずつ咲いている花の数も増えていく。
『 』
また呼ばれた。今度はもっと近い。
……たまらず走り出した。
ありえない事だった。
けれどその声を自分が聞き間違える筈がない。
───消えないで。
───どこにも行かないで。
焦る気持ちのまま走った。
そして───花の群生の只中に、彼はいた。
やはりという思いと信じられない思いが交錯し、思わず足を止めた。
彼の姿を見た瞬間、確かに胸が高鳴った。
からだ
おかしな話だ。肉体などとうに無くしてしまったというのに。
涙が溢れた。焦がれ続けた彼の姿が滲んだ。
誰にも赦されなくていい。 テ ラ
ただ彼の望みをかなえたかった。地球を見せたかった。
そして、もう一度会いたかった。
『……ジョミー』
『ブルー……!!』
微笑むブルーがジョミーの名前を呼んだ。
ジョミーは再び走り出し、ブルーの元へ駆け寄ると、その腕でブルーを抱き締めた。
力の限り、抱き締めた。
もう、どんな鎧も纏わなくてもいい。
ブルーの前でなら捨て去ってもいいのだ。
『ブルー……!』
『ジョミー……───ありがとう、ジョミー』
細い腕がジョミーを抱き締め返した。
ブルーから伝わる、言葉にならないほど深い感謝の気持ち。労わり。謝罪───……涙。
ブルーも泣いていた。
けれどそれは悲しみの涙ではない。
ジョミーと同じ、温かい涙だった。
ただ会いたかったと、愛しいと、心から湧きあがってくる痛いほどの喜びだった。
もう二度と離さない。
離れない。
そして二人で見守っていこう。
美しく再生した、この青い地球を───……。
<END>
誰もが考えるようなベタなシーンだとは思うのですが、どうしてもどうしても、このラストしか考えられませんでし
た(^^;)>
ジョミ×ブル的な展開をアニメに求めてはいけないと思いつつ、妄想と、もしもこうだったらなあ…なんて思った
事を書き連ねてみました。
力不足はありますが、書きたい事は全部書きましたので、それだけはちょっと満足です(^^)
ちなみにこの章を書いている私の頭の中では、昔聞いたユーミンの「ずっとそばに」って曲がかかってました。
私的にはブルー⇒ジョミーなイメージの曲です。
地味な古い曲ですが、なんでだか昔から好きな歌でした。
他にも某アニメ(これも古…)のエンディングの「それでも明日はやってくる」なんかも思い出してました。
昔聞いた歌の記憶や今の萌えが交じり合って、二次創作とはいえ何かの形になっていく。
年寄りくさいですが、歳をとるのも悪い事じゃないかな〜と思います(^^;)
こういった事はもちろん強要する事ではありませんが、もしもよろしければ一言でも、感想など聞かせてもらえ
たら嬉しいです。
ではでは、拙い小説ですがここまで読んで下さりありがとうございました!
心から感謝を込めて、お礼を申し上げますm(__)m
2007.12.26
小説のページに戻る インデックスに戻る