おにいちゃんといっしょ・おまけ 4
〜秋のお土産〜

   シンが高校から自宅に帰宅すると、待ちかねたようにブルーが家の奥から出迎えてくれた。
  「おかえりなさい、ジョミー!」
  「ただいま。早かったんだね、ブルー」
  「うん」
   今日、ブルーの小学校は遠足の日だった。
   まだ小学三年生のブルーの学年の遠足先は、隣町にある山だ。
   標高もそんなに高くはなく、ハイキングコースを一時間半ほど登れば頂上にたどり着ける。
   今日は快晴で、絶好の遠足日和だった。
   ブルーは母親のフレイアが作ってくれたお弁当をリュックにつめて、朝、元気よく出かけて行った。
  「今日は天気も良くてよかったね。楽しかった?」
  「うん、とっても!」
   シンに答えるブルーは満面の笑顔だ。
   その様子からすると、よほど楽しかったらしい。
   同い年の子供たちの中でも身体の小さいブルーがちゃんと付いて行けるか、シンは密かに心配していたのだが、それは杞憂で
  済んだようだった。
   シンが内心で安堵していると、ブルーが嬉しそうにシンを呼んだ。
  「ねえ、ジョミー。ちょっと手を出して」
  「何だい?」
  「いいから、出して」
  「……?」
   何だろうと思いながらもシンが右手を差し出すと、ブルーがその小さな手を重ねてきた。
   そしてシンの掌に、コロコロと何かが転がった。
  「ブルー?」
  「ジョミーにおみやげ」
   シンが自分の掌を見ると、まだ青い色をしたドングリが五つ。
  「これ、どうしたの……?」
   まったく予想もしていなかったそれにシンが問えば、ブルーは素直に教えてくれた。
  「頂上の公園でお弁当を食べた時にね、たくさん落ちていたの。この間、ジョミーも修学旅行のおみやげを僕にくれたでしょう?。だから
  ジョミーにあげる」
   それは思ってもいなかったお土産だった。
   高校生のシンはどんくりをもらっても、正直どうしようもなかった。
   けれどブルーがシンのためにそれを集めて持ち帰ってきてくれたというだけで、それは宝石よりも価値ある物に思えた。
   シンがどんぐりに見入っていると、ブルーが不安げに見上げてきた。
  「ジョミー……?」
  「……ありがとう、ブルー」
   シンはどんぐりを大切に握りしめると、ブルーを抱き上げた。
   急に抱き上げられたブルーは慌てて、シンの首にしがみついた。
  「わぁ、ジョミー!」
  「とっても嬉しいよ。大事にする」
  「よかったあ」
   礼を言うシンに、ブルーはにっこりと笑顔を見せた。
   本当はどんぐりよりも何よりもその笑顔が───ブルーが今日も一日楽しく過ごせた事が、シンには何よりのお土産だった。




何気にほのぼのラブラブ〜V


2011.11.20(2008.9.14)




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