ドラテラ・2


 

 失意のまま校長室から退室しようとしたジョミーだったが、校長に呼び止められた。
「ところで君は、もう原作は読んだ?」
「原作?」
 そういえば今回のドラマは、漫画が原作だとは聞いてはいた。
 けれどその漫画が発表されたのは約40年前。ジョミーが生まれる大分前の話だ。
 ジョミーは漫画も読むが特に漫画好きという訳ではないので、当たり前だが読んだ事はなかった。
「いえ、まだです」
「そうなの? 先生はソルジャー・ブルーのファンでね。夢中になって何度も読み返したものよ」
「はあ……」
 聞きもしないのに50代の女性校長は、頬を紅潮させてあれこれと話を続けた。
 しかしジョミーには何の事やらさっぱり分からなかった。
 教頭と担任の先生は下を向いて笑いをかみ殺していた。
 ジョミーの生返事などまったく気にせず、校長の話はしばらく続いた。
 全校朝礼での校長の話は短く簡潔で、そこが生徒から評判が良かったのだが、それが嘘のような話の長さだった。
「先生も子供だったから、占い師のフィシスをヒロインみたいに思ってたわ。でも大人になって来ると、子供の頃とは違う読み方ができるのよね」
「あの……そろそろ午後の授業が始まるので」
「ああ、そうだったわね。じゃあこれを」
 やんわりとジョミーが退室の意を伝えると、再び校長に引きとめられた。
 校長は校長室の、これまた重厚な造り本棚の戸をスライドさせた。
 中の棚にはずらりと厚い本が並んでいた。てっきり教育関係の本かと思いきや、よくよく見ればそれは漫画のコミックスばかりだった。
『校長先生、学校に何を置いているんだよ!』
「漫画には教育にも通じる素晴らしい作品が多いから、こうしていつも手の届くところに置いてあるのよ」
「……」
 もはやジョミーは何と返事をしたらいいのか分からなかった。
 絶句するジョミーに、校長は三冊の本を手渡してきた。
「はい。貸してあげるからすぐに読みなさい!」
 にこにこと満面の笑顔で渡されたその本のタイトルはもちろん、「地球へ…」だった。
失意のまま校長室から退室しようとしたジョミーだったが、校長に呼び止められた。
「ところで君は、もう原作は読んだ?」
「原作?」
 そういえば今回のドラマは、漫画が原作だとは聞いてはいた。
 けれどその漫画が発表されたのは約40年前。ジョミーが生まれる大分前の話だ。
 ジョミーは漫画も読むが特に漫画好きという訳ではないので、当たり前だが読んだ事はなかった。
「いえ、まだです」
「そうなの? 先生はソルジャー・ブルーのファンでね。夢中になって何度も読み返したものよ」
「はあ……」
 聞きもしないのに50代の女性校長は、頬を紅潮させてあれこれと話を続けた。
 しかしジョミーには何の事やらさっぱり分からなかった。
 教頭と担任の先生は下を向いて笑いをかみ殺していた。
 ジョミーの生返事などまったく気にせず、校長の話はしばらく続いた。
 全校朝礼での校長の話は短く簡潔で、そこが生徒から評判が良かったのだが、それが嘘のような話の長さだった。
「先生も子供だったから、占い師のフィシスをヒロインみたいに思ってたわ。でも大人になって来ると、子供の頃とは違う読み方ができるのよね」
「あの……そろそろ午後の授業が始まるので」
「ああ、そうだったわね。じゃあこれを」
 やんわりとジョミーが退室の意を伝えると、再び校長に引きとめられた。
 校長は校長室の、これまた重厚な造り本棚の戸をスライドさせた。
 中の棚にはずらりと厚い本が並んでいた。てっきり教育関係の本かと思いきや、よくよく見ればそれは漫画のコミックスばかりだった。
『校長先生、学校に何を置いているんだよ!』
「漫画には教育にも通じる素晴らしい作品が多いから、こうしていつも手の届くところに置いてあるのよ」
「……」
 もはやジョミーは何と返事をしたらいいのか分からなかった。
 絶句するジョミーに、校長は三冊の本を手渡してきた。
「はい。貸してあげるからすぐに読みなさい!」
 にこにこと満面の笑顔で渡されたその本のタイトルはもちろん、「地球へ…」だった。




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