ドラテラ・4



 

 翌日の日曜日も撮影日だった。
 スタジオの敷地内のオープンセットにフィールドを作って、サッカーのシーンを収録する事になっていた。
 ジョミーが高校生であるために、どうしても土日に撮影が集中する事になりそうだった。
 もっともいざ平日に撮影という事になっても、高校側からは何の躊躇もなくOKが出そうだった。
 スタジオには何しろ広い敷地があるので、サッカーのフィールドを作るのなどは余裕なようだった。
 ジョミーはクラスメイト役の俳優やエキストラ達と揃いのユニフォームを着た。
 集まっていたのは同年代と思われる少年ばかりだった。
 ジョミーは昨日の今日で緊張はしていたのだが、リハーサルの時点でそれは消え失せた。
 何しろ今日やるのは演技というよりも、サッカーだ。
 元々ジョミーは身体を動かすのは嫌いではないし、サッカーは楽しかった。
 台本通りに見事にシュートを決めて、ジョミーは台詞を言った。
「よっしゃ、逆転―!!」
 大きな声を上げると、監督がメガホンを使って叫んだ。
「はい、OKです」
 監督の声はメガホンを使ってもか細い声だった。
「じゃあ休憩に入って、10分後に本番開始しまーす!」
 制作進行スタッフの声の方がよほど張りがあって、メガホンなど使わなくてもフィールドの隅々にまで大きく響いた。
 ジョミーは休憩時間に、サム役のサムと話をした。
 サムはジョミー・マーキス・シンの親友という設定だ。
 その親友を演じるサムは、14歳という設定には少々無理のある老け顔だった。
 けれど年齢を聞くとジョミーと同じ高校一年生で、この世界に入ったのもまだ半年足らずという話だった。
 そのためジョミーはすぐにサムと親しくなった。
 スウェナ役のスウェナは美人ではあったが、どう見ても20歳は過ぎている感じだった。
『どういう基準で選んだのかな。監督やプロデューサーのイメージかな?』
 しかし二人ともやはりこの世界を志しただけあって、演じれば14歳の子供っぽさを見せてくれた。
 サムは普段からそうなのか、遠慮なくあれこれジョミーに質問をぶつけてきた。
「ジョミーさ、昨日の収録ですっげーNG出しまくったんだって?」
「う、誰からその話を……!」
「そりゃもちろん撮影スタッフの人からさ。そんな事聞いていたから、今日は何時に終わるんだろうって思ってたけど、良い感じでリハーサルが終わってホッとしたわ。本番もこの調子でよろしくな」
「それはどうも」
 サムは飾らない性格のようで、物言いに嫌みがなかった。
 だからジョミーも変に構えずに話す事ができた。
「でもあれだろ? 俺は出番が被ってないけど、ジョミーはブルーさんとのシーンが多いんだろ?」
「うん、そうらしいけど」
 第二話以降の台本は未だもらっていなかったが、またブルーと撮影で一緒になる予定はあるだろうと思った。
 ジョミーはソルジャー・ブルーの後継者になるのだから、関わり合いがない訳がなかった。
「何だかあの人、怖くね?」
「え?」




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