おにいちゃんといっしょ・おまけ 3
〜3.5〜

   シンは階段までやってくると、抱いていたブルーを下ろした。
  「ジョミー?」
  「もしもブルーを落として怪我させちゃうといけないからね」
   不満げなブルーに、シンはそう言った。
   けれどすぐにシンが手を繋いでくれたので、ブルーは機嫌を直した。
   そしてシンが先に階段を降り、ブルーがその後ろをついていった。
  「ねえ、ジョミーの一番好きな食べ物ってなに?」
   階段の途中でブルーがシンに聞いてきた。
  「僕の?」
  「うん、教えて。僕作れるようになりたい」
  「当ててごらん」
  「うーん……ハンバーグ?」
  「ハズレ」
  「じゃあ鳥の唐揚げ?」
  「それも違う」
   それはシン家の食卓によく並ぶし、シンも美味しそうに食べていたのでてっきりそうだとブルーは思っていたのだが、シンは違う
  と言う。
  「分かんないよ、ジョミー」
  「そりゃあ、分かったらちょっと困るからね」
  「?」
   早々に降参するブルーに、シンは階段を降り切ったところで振り返った。
  「僕の一番の好物、いつか食べさせてくれる?」
  「僕に作れる? マリアおばさんも作れるもの?」
  「母さんは作れないんだ」
  「ええー、そんなに難しいものなの?」
   料理上手のマリアでも作れない料理がブルーに作れるのか、やっとだし巻き卵を作ったブルーははなはだ不安だった。
   そんなブルーにシンは優しく言った。
  「大丈夫。ブルーだけしか食べさせられないものだから」
  「僕だけ……?」
   それはいったい何なのか、どうしても分からないブルーはシンに聞いた。
  「ねえ、ジョミーは何が好きなの?」
  「それは、その時教えるから」
  「ええー、気になるよ。ヒントちょうだい。どんな味?」
  「それは僕もまだ知らないんだ」
  「知らないのに大好物なの?」
  「うん」
  「???」
   階段下での押し問答。
   訳が分からないブルーは、首をかしげるばかりだった。
   そんなブルーにシンは苦笑しながら言った。
  「いつかちゃんと教えるから。その代わり、その時は絶対僕に食べさせてね」
  「……うん」
   頭を疑問符でいっぱいにしながら、ブルーはそれでも頷いた。
   もう一つ、大切な約束を取り付けたシンは、さも嬉しそうににっこりと笑った。




本編の3のおまけです。
シンの大好物…そんなの決まってます。
しかし文章に進歩はないけど、よこしま度は昔の方が高かった気がするなあ(^^;)


2011.7.2(2008.9.21)




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