おにいちゃんといっしょ・24
シンと一緒にブルーも応援したのだが、日本チームが惜敗してしまったVSオランダ戦。
シンが買ってきてくれたユニフォームを着て応援していたブルーは、試合が終わってしょんぼりしてしまった。
「残念だったわね、ブルー」
「ブルーちゃん、一生懸命応援してくれたのにね」
一緒に観ていたフレイアとマリアが慰めたが、ブルーの沈んだ表情は変わらなかった。
「僕が応援したから負けちゃったのかなあ……」
ブルーはぽつりとつぶやきながら、着ていたユニフォームの裾を両手で掴んだ。
シンは慌ててそれを否定した。
「そんな事ないよ。ブルーが応援してくれたからいい試合ができたんだよ」
「そうかなあ」
「そうだよ。そりゃあ負けたのは悔しいけど、日本とオランダのランキング差を考えれば、日本は善戦した方だと思うよ」
「そっかあ……」
サッカーに詳しいシンの言葉に、ブルーはようやく安心したのか笑顔を見せた。
そして数日後、木曜日の夕食時、またまたワールドカップの話になった。
「ジョミー、次の日本の試合はいつ?」
「今日だよ」
「今日!」
シンの答えに、ブルーは驚いた。
「そう。正確には明日の午前三時半にキックオフかな」
「午前三時半……」
午前三時なんて、ブルーが起きた事もない時間だった。
ちらりと隣のフレイアを伺うと、ばっちりと視線があった。
「ブルー、なあに?」
フレイアは笑顔だったが、目だけが笑っていなかった。
ブルーが日本VSデンマーク戦を観たいと言っても、絶対に許さないわよ!……という雰囲気がにじみ出ていた。
「な、なんでもない……」
そのあまりの迫力に、ブルーは何も言えなくなった。
そんなやりとりを見ていたシンは、ふといい事を思いついた。
「ブルー、今日はユニフォームを着て寝ようよ」
「え?」
「それで寝ながら日本を応援すればいいよ。僕も着るから」
「うん、そうする!」
シンの提案に、嬉しそうにブルーは笑顔を零した、
「じゃあ僕、今日はジョミーと一緒に寝るね!」
「え?」
ブルーの笑顔に満足しかけたシンは、突然の話に一瞬固まった。
「ママ、マリアおばさん。今日ジョミーと一緒に寝ていい?」
「もちろん、ブルーちゃん泊っていってね」
「いいわよ。ジョミー君を蹴飛ばしちゃだめよ」
二人の母親はもちろん快諾した。
「よかったあ! ジョミー、早く寝ようね」
「ああ、そうだね……」
実はシンは今夜も起きて、日本VSデンマーク戦を観る予定でいた。
しかし嬉しそうなブルーにそうは言えずに、多少ひきつりながらも笑顔で頷いた。
翌日の午前三時、シンの枕元で携帯電話が微かに振動した。
暗闇の中、シンは片手でそれをそっと止めた。
寝る前に、この時間に起きられるようにセットしておいたのだ。
やはりサッカー好きのシンとしては、どうしても日本VSデンマーク戦が観たかった。
ブルーはシンの隣で眠っていた。
シンの提案通りに、二人してサムライブルー色のユニフォームを着て眠ったのだ。
ブルーを起さないように、シンはそっと身を起し、ベッドから降りようとした。
けれど何かがシンの動きを阻んだ。
「?」
携帯電話の画面の微かな明かりで確認すると、なんとブルーの手がシンの着ていたユニフォームの裾を掴んでいた。
『ブルー……!』
手を離させるには忍びない、けれどこのままでは試合が観られない───。
困ったシンの耳に、ブルーの寝言が聞こえてきた。
「……日本……がんば……」
むにゃむにゃと不明瞭なものでありながら、ブルーは夢の中で一生懸命日本チームを応援しているようだった。
シンはあっさりと試合を諦めた。
ワールドカップも大切だが、隣に眠るぬくもりの方がもっともっと大切だったからだ。
心の中で日本チームを応援しつつ、シンは再びベッドに横たわり、隣に眠る貴重なぬくもりを抱きしめた。
翌朝、目覚めた二人にもたらされたのは、日本チームの勝利のニュースだった。
「日本勝ったの? やったあ!!」
「やったね、ブルー!」
シンとブルーの二人は、ハイタッチして喜んだ。
特にブルーは大喜びで、興奮気味にシンに教えてくれた。
朝のニュース番組で試合のハイライトが映されて、それを見たブルーは歓声を上げた。
「僕ね、夢の中で本田選手がゴールしてるの見たんだよ!」
「それは正夢だね。ブルーの応援が届いたんだね」
「うん!」
ブルーはもう、朝からにこにこと上機嫌だった。
シンも試合が観れなかった物足りなさはあれども、一晩中ブルーを抱きしめていられて幸せな一夜だった。
日本、決勝トーナメント進出おめでとうございます〜!
パジャマ代わりにユニフォームを着て応援というのは、すずか様のアイデアです。
そしていろいろ妄想していたんですけど、日本の勝利にまたまた書きたくなってしまいました(^^)
ちなみに子ブルのユニフォームは18、シンは8を着ているといいですね〜v
2010.6.26
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